SNSで起こりうるリスクとその対策
- 対策方法
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス、Social Networking Service)は、多くの人から人気を集め、個人や企業によるビジネス目的のSNS運用も活発になりました。しかし、SNSを上手に利用すれば有効な情報発信ツールとなる一方で、さまざまなトラブルやリスクも存在するため注意が必要です。
また、リスクの予防や対応が遅れることで、個人や企業の社会的評価を損失してしまう恐れがあることも理解しなければなりません。SNSを安全に利用するための知識を身に付けることは、リスクを最小限におさえるうえで重要な取り組みです。
SNSを利用する際に起こりうるリスクの例
SNSを利用するうえでは、次のようなさまざまなトラブルやリスクが存在するため注意が必要です。
- 炎上のリスク
- 個人情報の漏洩
- フィッシング詐欺
- フェイクニュースの拡散
- 情報の悪用
炎上のリスク
SNSを利用する際にもっとも注意するべき事象は炎上リスクです。拡散力が高いことはSNSの大きなメリットですが、一度批判を浴びてしまうと収拾がつかないほどのダメージを個人や企業が受け、社会的評価を損失させる危険性があります。
注目を集めたいがために行き過ぎた内容や、多くの人に不快感を与えるような内容の投稿は炎上につながる可能性が高いので注意が必要です。また、SNSの投稿をニュース番組で取り上げることも多くなったため、SNSの影響力は非常に大きくなっています。
個人情報の漏洩
個人情報の漏洩も大きなリスクであり、SNSを企業で運用している場合は機密情報の流出に特に注意をしなければなりません。たとえば、SNSに投稿した写真の位置情報から、意図せず不特定多数の人に自宅を特定されてしまうこともあり、ネットストーカーによる被害も見られるようになりました。
公開範囲を設定していたとしても、友人のネットワークを通じて情報が拡散してしまったり、個人や企業名を開示しなくても投稿内容から特定されてしまったりするケースもあります。また、顧客情報を流出させてしまったことから損害賠償に発展してしまうケースもあるため、個人情報の発信には細心の注意が必要です。
フィッシング詐欺
企業の名前やロゴを真似てメッセージを送りつけ、個人情報を提供させるなどのフィッシング詐欺もリスクのひとつです。銀行や宅配便、オンラインショップなどを装い、偽のアカウントからユーザーの個人情報を引き出そうとする詐欺被害が現れ続けています。
金融機関のログイン画面を模倣したフィッシングサイトも巧妙化しているため、ネットバンキングなどにログインする際は特に注意を払う必要があります。身に覚えのない発信者や件名のメールなど、怪しいものはそのまま削除することが得策です。
フェイクニュースの拡散
捏造された情報が拡散されることによって、社会的信頼が失われてしまうフェイクニュースによるリスクも多く見られます。大勢の人がフェイクニュースを信じてしまった場合、選挙結果や政治の状況が変化してしまうほど影響力は大きくなる可能性があるため注意が必要です。
また、医療や健康情報、災害など、身近で関心のあるジャンルについてのフェイクニュースも多く存在します。良かれと思い家族や友人に自分自身で拡散してしまう危険性もあるため注意が必要です。
情報の悪用
情報の悪用は大きな社会問題にもなっています。小学生から社会人まで年齢を問わず広い範囲でイジメや犯罪の要因となっているのが現状です。気軽に投稿した写真や動画を悪用されてイジメに発展するケースや、悪い大人が情報を悪用して子供に接触し、犯罪につながるケースなどがあります。
また、匿名であることを悪用して無責任な発言や他人への誹謗中傷、嫌がらせなどをおこなった事例もあります。情報の悪用の被害を受けた人は自殺にまで追い込まれ、大きな社会問題を引き起こす事態となった事例もあるため、情報の取り扱いには細心の注意を払うことが大切です。
SNSにおけるリスク対策
SNSにおけるリスク対策は次のとおりです。
- 適切なプライバシーを設定する
- セキュリティ対策を強化する
- 信憑性のある情報か確認する
- 適切な情報発信をする
- 早期対応を心掛ける
- ソーシャルリスニングを実施する
適切なプライバシーを設定する
意図せず取り返しのつかない問題を起こさないためにも、適切なプライバシーの設定をおこなう必要があります。自分の投稿を公開する範囲を家族や友人、特定のグループに限定するだけでも大幅にリスクを防ぐことが可能です。
たとえばアプリを取得した際、最初に開いた時に位置情報やトラッキングについてのポップアップが表示されますが、不要なものに関しては許可する必要はありません。ただし、アプリの利便性を向上させるために要求を許可する場合は、信頼性のあるアプリであるか提供元をしっかり確認してから設定することが大切です。
適切な情報発信をする
SNSを利用するうえで重要なのは適切な情報発信です。不適切な発言や行動が注目されてしまうと、ユーザーの手によって犯人探しのような動きに発展し、個人情報を晒されてしまう危険性があります。
そのため、下記の規則を守り、信憑性のある情報を発信することが重要です。
- 法律に触れない
- 不謹慎な発言は避ける
- 誰かを批判しない
- 不誠実な態度はとらない
- ポジティブな発信をする
セキュリティ対策を強化する
インターネットに接続している機器については、最新のプログラムによってセキュリティ対策に効果があるため、プログラムの更新はまめにおこなうことが重要です。また、パスワードを定期的に変更したり、複数のSNSで同じパスワードを使用しないようにしたりすることでも、セキュリティの強化につながります。
アカウントへの不正アクセスを防ぐため、2段階認証を有効にすることも効果的であり、セキュリティのレベルを大幅に向上することが可能です。
信憑性のある情報か確認する
SNS上で検索する際、信憑性のある情報源であるかを十分確認することも重要です。有効な策は公式アカウントであるかを見極めることです。InstagramやFacebook、Twitterなどでも認証済みのアカウントであるかを確認してからページを開くことがトラブル防止につながります。
また、複数の情報源を参照した際に、内容が同じ情報を提供している場合は信憑性が高くなります。しかし、内容が異なる場合には注意を払い、自ら拡散するようなことは避けることが必要です。
早期対応を心掛ける
万が一、炎上や個人情報流出などのトラブルが発生してしまった場合、早期の対応が大切です。しかし、誤った対応によって再度炎上を招いてしまったり、流出したアカウントを不正利用されてしまったりする恐れもあるため注意が必要です。
トラブルに備え、SNSを利用する際はトラブル発生後の対応策を事前に検討しておくことが重要です。手口の巧妙化からトラブルを万全に防ぐことは困難ですが、早期発見して適切な対応を取ることで、被害を最小限におさえられます。
ソーシャルリスニングを実施する
ソーシャルリスニングとは、SNSやブログ、掲示板など、インターネット上で発信された情報を集めて分析し、その結果から得る情報や意見をビジネスに反映させるマーケティング手法です。業界のトレンドの把握や顧客の生の声、ブランドイメージの明確化など、実施することでさまざまなメリットがあります。
炎上や個人情報の漏洩といったリスクの回避にも活用が可能です。自社でソーシャルリスニングを実施できない場合は、風評被害会社へ相談することで実施できます。
SNSを運用する際の注意点
組織でSNSを運用する際の注意点は次のとおりです。
- ガイドラインの策定をする
- 内部起因に目を向ける
- 従業員への研修をおこなう
- リソースを確保する
- ノウハウを蓄積する
ガイドラインの策定をする
企業にとっても大きな影響を受けてしまう従業員の個人アカウントに対して、炎上リスクを防ぐためにガイドラインの策定が必要です。個人アカウントを監視することはプライバシーの侵害という問題もあるため完全に管理することはできません。
しかし、SNS利用についての注意事項を従業員に周知させることで、暴走を防ぐ手段のひとつとなります。万が一、炎上などのトラブルが発生してしまった場合に備えて、事実確認や報告ルート、対応策などをガイドラインで示しておくことが大切です。
内部起因に目を向ける
社内端末から情報漏洩などのリスクを防ぐため、位置情報やサイトの閲覧履歴などを確認する必要もあります。しかし、企業側が確認できない履歴などもあるためすべてを管理できるわけではありません。そのような場合は社用端末の管理や監視が可能なソフトウェアの導入が効果的であり、社用端末の私的利用を防止することができます。
従業員への研修をおこなう
SNSにおける炎上リスクなどが年々大きくなっていることから、従業員への定期的な研修が必要です。情報の漏洩はもちろん、適切なプライバシーの設定やセキュリティの強化についての重要性にも理解を深めてもらいます。
従業員の個人アカウントから炎上し、職場を特定されて会社を巻き込んだ騒動に発展するケースも少なくありません。そのため、従業員だけではなく、アルバイトやパート、派遣社員にも良識を持った行動の指導をおこなう必要があります。
リソースを確保する
企業のSNS運用においては、あらかじめ危機管理体制を整えておき、緊急なトラブル発生時でも迅速な対応が取れるようリソースの確保が必要です。SNS上での情報が拡散されるスピードは非常に速いため、対応も迅速におこなう必要があります。
対応の遅れは企業にとって大きな損失となる可能性もあるため、専門的なチームによる対処が重要です。また、専門的なチームを構築できれば信頼性の維持や継続的な監視にも有効です。
ノウハウを蓄積する
SNS運用におけるリスクに対するノウハウの蓄積も重要です。過去のリスクに対する予防や対応を振り返り、定期的に評価することで問題解決のスキルを向上させることができます。
継続的におこなうことでリスクの変化を敏感に察知し、予防策や対応策の策定に有効です。従業員のリスクに対する意識を高めるためには、教育やトレーニングを実施し、定期的に見直しや改善をおこなうと効果的です。
まとめ
SNSは情報の共有やコミュニケーションの場として利便性が高いだけでなく、ビジネスにも活用できます。個人や企業でSNSの活用が進んでいますが、炎上や情報の漏洩などのリスクが潜んでいることを十分に理解することが大切です。
適切なプライバシーの設定や情報発信、セキュリティ強化などのリスク対策をおこない、万が一トラブルが発生してしまってもできる限り早期に対応することを心掛ける必要があります。SNSを安全に利用するためには、日頃からリスクに対する意識を高めておくことが重要です。
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