WEBサイト管理者が考えるべきリスクマネジメントとは
- 対策方法
リスクマネジメントとは、想定されるリスクに対して事前に対策を取る一連のプロセスです。WEBサイトやSNSを運用する企業が、インターネット上で大きなトラブルを防ぐためには、どのようなリスクがどこに潜んでいるのかを把握し、適切な対応策を取ることが不可欠です。そのため、メディアやSNSの運用者はインターネット上の安全性の担保に向けて、正しいリスクマネジメントの手順を踏んで、継続的に実施する必要があります。
WEBサイト運営におけるリスクマネジメントの重要性
企業は毎日、さまざまなリスクに取り囲まれているため、リスクへの対策が必要です。自然災害へのリスク対策は、これまで各企業でもおこなわれてきました。しかし、現代ではビジネスにおけるDX化やグローバル化が急速に進んだことによって、情報セキュリティに関する新たなリスクも増えてきています。
そのため、さまざまな業界や分野における企業は、リスクマネジメントの重要性を深く考えるようになり、特にWEB上でのリスク対策は不可欠となりました。リスクマネジメントを実施したからといって完全にリスクを防止できるわけではありませんが、あらゆる事態を想定し、万全に備えておくことで被害を最小限におさえることが可能です。
参考 : 中小企業・小規模事業者を取り巻くリスク(中小企業庁)
WEBサイト運営におけるリスク
WEBサイト運営における主なリスクは次のとおりです。
- 個人情報漏洩のリスク
- 炎上のリスク
- セキュリティ上のリスク
- 自然災害によるリスク
- 法的リスク
個人情報漏洩のリスク
WEBサイトやSNSを運営するうえで、個人情報の漏洩には細心の注意を払わなければなりません。個人でもインターネットの利用が一般化した現代では、企業でも多くの個人情報を取り扱う機会が増えています。
情報漏洩が発生してしまうと顧客からの信頼を失ううえ、法的な処罰を受けるケースもあるため十分注意が必要です。顧客データを外部に持ち出したり、紛失したりすることで漏洩のリスクが高まってしまうため、個人情報の適切な取り扱いについての社内教育が欠かせません。
炎上のリスク
炎上とはWEBサイトのコメント欄や公式SNSアカウントなどで、企業に対する批判や抗議といったコメントが集中して寄せられてしまう状態です。企業がWEBサイトやSNSを運営するうえで炎上のリスクは低くなく、企業側が十分に注意していても従業員の個人アカウントから炎上するリスクも考えなければなりません。
新聞やテレビのニュースでも取り上げられてしまうと、大きな社会問題へ発展するケースもあります。また、誤った対応によっては再び炎上を起こす二次炎上の危険性も考えられるため、炎上への対応は重要です。
セキュリティ上のリスク
個人情報の漏洩も含め、データの外部流出やウイルス感染、不正アクセスなど、WEBサイトやSNS運用によりインターネットを利用している以上はセキュリティリスクが必ずともないます。こうしたリスクは業務に支障をきたすだけではなく、顧客側にも損害を与えかねません。
そのため、企業でのセキュリティ強化や定期的な監視、アクセス制御などの実施は必須です。また、不正アクセスによって引き起こされるシステム障害やシステム破壊などのリスクを想定し、データのバックアップ体制も確立しておく必要があります。
自然災害によるリスク
日本における地震や水害、台風など、自然災害による被害は年々増加しており、こうした災害時のリスクもWEBサイトやSNS運用のためのシステムに大きな影響を与えます。あらゆるリスクのなかでも自然災害は予測不能な事態が起こりやすく、完全に防止することはできません。しかし、リスクマネジメントによってリスク対策を講じておくことで、被害を最小限に食い止めることや早期復旧が期待できます。
また、BCP(事業継続計画)が不測の事態が起きても事業を継続することができるように、マニュアルの策定も有効です。自然災害におけるリスクには、日頃からの訓練が大きく活かされるため、十分な警戒と備えが必要です。
法的リスク
法律は時代に沿って変化していくため、インターネットと法律の関係性については十分な調査と理解が必要です。刑罰や損害賠償などの問題に発展しかねないため知らなかったでは済まされません。
理解が不十分なまま情報発信を続けてしまうと著作権やコンプライアンス、特定商品取引法など、法律に触れてしまう恐れがあります。そのため、コンテンツなどの内容も法的基準に沿って作成されているか十分な確認が必要です。また、インターネット関連の法改正なども日頃からチェックし、自社のサイト内に問題点があれば、すぐに修正する必要があります。
WEBサイト運営におけるリスクマネジメントの手順
リスクマネジメントは次のステップで進めていきます。
- リスクの特定
- リスクの分析
- 優先度の決定
- 監視(モニタリング)
- リスクへの対応
リスクの特定
まずはWEBサイトやSNSを運用するうえで想定されるあらゆるリスクの洗い出しです。この時点ではリスク発生の頻度や影響度などは考慮せず、少しでも企業の目的を阻害する可能性のあるリスクをすべて洗い出します。
リスク洗い出しの方法としては、従業員へのアンケート調査やヒアリング、チェックリスト方式などを用いてリストアップし、一覧表を作成しておくことが理想です。また、IT分野に知識のある専門家に依頼し、重大なリスクが潜んでいないかチェックしてもらうのもひとつの手段です。
リスクの分析
特定されたリスクが及ぼす影響を分析し、リスクにおける大小のレベルを決定します。ここでは、どのようなリスクがWEBサイトやSNS運用にどれほどの影響を与えるのかを分析することで、次のステップであるリスク対応の優先度の判断をしやすくすることが目的です。
分析にはリスクの影響度と発生の確率を数値化し、2つを掛け合わせた数値が大きいほどリスクレベルも大きいといえます。また、こうして数値化することによってリスクを可視化できるため、重大さを理解しやすくする意味でも重要な作業です。
優先度の決定
リスクが発生した際、限られた時間やリソースを効果的に活用するために、重要性の高いリスクから対応できるよう優先順位をつける必要があります。自然災害などが発生した場合、システム障害やシステム停止など、さまざまなリスクが一気に発生する恐れがありますが、非常時にすべてのリスクに対応するのは困難です。そこで、顧客に関わる情報といった影響度の高いリスクや緊急性のあるリスクを事前に把握しておくことで、被害を最小限におさえられます。
監視(モニタリング)
現代ではIT技術の発展により日々変化するリスクに柔軟に対応するため、継続的なリスクの監視が必要です。場合によっては優先順位の変更やリスク要素の追加、修正なども必要になるため、担当者を配置してリスクを管理し、定期的に報告会などをおこないます。リスクマネジメントは常に最新の状態にアップデートしておくことが重要です。
リスクへの対応
実際にリスクが発生した時は対応策を実行します。この時、計画の有効性などを確認し、今後の対策にしっかり反映させることが大切です。
リスクマネジメントを実施したからといって完全にリスクを防止できるわけではありません。しかし、不測な事態でも大きな打撃を受けないために準備をしておくことで迅速な対応が可能となります。
WEBサイト運営におけるリスクへの対応策
リスクへの対応策は次のとおりです。
- リスク回避
- リスク低減
- リスク移転
- リスク保有
リスク回避
リスク回避とは、リスク発生の原因となる行動を起こさないことです。たとえば新規事業を検討する場合、リスク発生の可能性が高いと判断されたら活動を断念することによってリスクを回避することができます。新たにWEBサイトを立ち上げる際も、安全性の確保が見込めない場合は断念する必要があります。新規事業によって得られる利益よりも、発生する可能性が高いリスクのほうが重大である場合にはやむを得ない選択です。
リスク低減
リスク低減とは、リスク発生の可能性を下げる、もしくは発生してしまった場合の影響の大きさを下げることです。現実的に多くの企業ではリスクを回避することができないため、低減する方法を取っていると考えられます。
リスクを低減する方法とは、リスクの発生確率と影響度の数値をできるだけ下げるという対策です。また、リスクの源泉を分散させて被害を最小限にとどめるという対策もあります。
リスク移転
リスク移転とは、リスクを外部へ移転することです。保険契約や業務委託契約など、リスクの一部、または全部を外部へ委ねることによってリスクを軽減させることができます。保険料や外注費などの費用がかかってしまう点はデメリットとなりますが、リスク対策としては有効な選択肢のひとつです。
リスク保有
リスク保有とは、リスク対策を取らずにそのまま受け入れることです。さほど影響の少ないリスクであると判断した場合や対策が打てずにやむを得ず受け入れる場合もあります。
多少のデメリットを背負ってしまっても受け入れる選択をしたほうが合理的だという場合もあるため、適切な選択が重要です。また、WEBサイトにおけるリスクは、発生の可能性が低い割には対策にかかるコストが大きい場合もあり、リスク保有は効果的な選択肢のひとつです。
まとめ
企業がインターネットを活用して売上を拡大するうえで、リスクマネジメントは重要な業務です。リスクマネジメントの実施により潜在的なリスクを認識することが可能となり、想定されるリスクに対して予防策や対応策を取ることができます。
不測の事態でも被害を最小限におさえるためには、リスクマネジメントを継続的に実施し、時代とともに変化するリスクにも対応できるような体制を整えておくことが重要です。また、WEBサイトの安全性の確保は顧客との信頼関係の向上にもつながります。
参考URL