デジタルタトゥーとは?その後の企業活動に与える影響と対処法は?

デジタルタトゥーとは、一度インターネット上に発信された内容がいつまでも残り続けるということを表す言葉です。個人はもちろん、企業に対しても非常に大きな悪影響を及ぼすことがあり、その範囲は売上、信用、採用など多岐にわたります。

一度落ちた印象を回復させるには非常に長い時間がかかりますので、ブランドイメージを低下させないためにもデジタルタトゥー問題を正しく理解し、情報発信をすることが重要です。

デジタルタトゥーとは

デジタルタトゥーとは、一度インターネットで広まった書き込みは簡単に消せないことを表す言葉です。

2007年に牛丼チェーンでおこなわれた「テラ豚丼」を皮切りにバイトテロがデジタルタトゥーとして広まり、2013年にはTwitterによるバイト店員による悪ふざけをバカッターと呼び社会問題にも発展しました。

2023年時点でも通称「舐めロー」動画が拡散されているところを考えると実質的には、この10年間ではデジタルタトゥーの問題は解消されていないといえます。

インターネットで公開された情報はいつでも過去の情報を取りに行きやすいという点で便利ではありますが、一度拡散されてしまうと誰でも簡単にコピーができ、いつまでも残り続けるという特徴から完全削除は困難です。

情報を公開した本人の知らないところで話題にされたり、拡散されたりを繰り返し、個人や企業に経済的な損失を与えるということも珍しくありません。

デジタルタトゥーの危険性

デジタルタトゥーが原因で個人や企業が実害を受けることは頻繁に見かけます。

個人の例では、就職や結婚などの人生の転機にインターネット上で名前を検索されデジタルタトゥーを発券されてしまうという可能性があり、企業の例では一度ブラック企業と認知されてしまうと社内環境が変わって働きやすくなってもブラック企業という認知が変わらないというような悪影響もあります。

完全には消せない

デジタルタトゥーはプライバシーの侵害のように法律違反があればプロバイダ責任制限法に則り削除することができます。

ただし、適正な手段で削除依頼をおこなっても削除がなされない場合には裁判に発展するケースもありえます。

このため、基本的にデジタルタトゥーを削除することはできるのですが、目視確認できたサイトに対して削除申請をするという特性上、確認できないサイトへの対処はむずかしいことが多く、事実上、デジタルタトゥーの根絶はむずかしいのが現状です。

参考:インターネット上の違法・有害情報に対する対応(プロバイダ責任制限法)(総務省)

※プロバイダ責任制限法は通称名、正式には「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」です。

デジタルタトゥーの種類

デジタルタトゥーの種類には次のようなものがあります。

  1. 不適切な発言や失言
  2. 過去に関する情報
  3. 個人情報
  4. 誹謗中傷やデマ
  5. リベンジポルノ
  6. 悪ふざけや悪戯
  7. 逮捕歴や前科

個人だけとは限らず、企業にもデジタルタトゥーが残る可能性があります。

不適切な発言や失言

芸能人や政治家であればテレビでの失言もありますが、現代ではTwitterをはじめSNSでの不適切発言や失言がデジタルタトゥーの中心です。

個人的な考え、企業としての情報発信、代表としての意見もすべてデジタルタトゥーになる可能性があります。

特にSNSでは拡散力が強く、発言を削除しても第三者による拡散が止まらないことも頻繁にあり、残りやすいのが特徴です。

過去に関する情報

企業そのものの過去の情報はもちろん、従業員の過去のおこないが炎上につながるケースもあります。

過去の情報でデジタルタトゥーに該当するのは次のようなものです。

  • 事件や訴訟
  • クレーム
  • 不祥事
  • 逮捕歴

特に求職者は企業情報を事前に調査しますのでインターネット上に残り続けることでマイナスの印象を植え付けてしまう可能性があります。

個人情報

一般的に住所や電話番号などの個人情報は不用意にインターネット上に公開してはいけません。

しかし、嫌がらせや悪戯で第三者に公開されてしまうということがあります。

匿名掲示板のような場所で書き込みがなされるとコピーサイトにより自動的に複数のサイトで個人情報が公開されてしまうことがあります。

誹謗中傷やデマ

企業に対する誹謗中傷やデマは根強く残るデジタルタトゥーです。

一見鎮静化したように見えても再炎上するリスクがあり、ネガティブな情報を削除するには時間と労力がかかります。また、一見すると批判と区別がつきづらいことも多く、正規の手続きを踏んでも削除できないこともありえます。

リベンジポルノ

元交際相手を中心とした性的な画像や動画がアップロードされるリベンジポルノも社会問題になっているデジタルタトゥーです。

対策のためにリベンジポルノ防止法(正式名称:私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)もありますが、根絶することはむずかしいのが実情です。

悪ふざけや悪戯

警察に逮捕されるとニュースが公開されるため、拡散されることがあります。

逮捕されたとしても不起訴になれば有罪ではありません。

しかし、逮捕された時点で犯罪者のように扱うSNSでの情報発信が目立ち、しかも無罪になった場合であっても無罪について拡散されることは少なく、名誉の回復には相当の時間を要します。

デジタルタトゥーが個人に与える影響

インターネットに残り続けるデジタルタトゥーは個人に対して次のような悪影響を与えます。

  • 就職への影響
  • 交際や結婚への影響
  • 周囲への影響
  • 契約への影響
  • 労働環境への影響
  • 死後にも残る

就職への影響

リファレンスチェック(求職者の前職での勤務状況や性格などを前職の関係者に確認すること)の一環として、応募者の氏名をインターネットで検索することがあります。

このときに過去の不適切な発言、SNSでの発信内容、個人ブログの内容などが採用結果に大きな影響を与えてしまうことがあります。

また、本人の責でないものでは、同姓同名の別人の不祥事を自分だと誤解されて悪影響を受けることがあります。

参考:インターネット検索サービスの表示削除をめぐる諸問題(東京弁護士会)

交際や結婚への影響

リベンジポルノや逮捕歴などに関する情報は、交際や結婚にも悪影響を与えます。過去のことと割り切れる人は少数派で、どうしてもネガティブな情報ととらえられがちです。

交際する当人同士では問題なくとも周囲からは奇異の目で見られることもあり、人生に影響する問題といえます。

周囲への影響

デジタルタトゥーは本人に深刻な被害を及ぼすことがありますが、家族をはじめ、勤務先や就学先などの周囲にも悪影響を与えることがあります。

本来は本人だけの問題であるにもかかわらず、周囲に対する誹謗中傷へと波及することもあり、影響範囲は非常に広いのが特徴です。

契約への影響

クレジットカードや借入時にはCICやJICCのような機関が審査をおこないますが、賃貸借契約のように特定の企業や個人が審査する契約についてはデジタルタトゥーが影響することがあります。

賃貸借契約では仲介会社、管理会社、家主、家賃債務保証会社のように関係者が多く、どこか1つの審査が通らないだけで契約が締結できない、というような事態が起こりえます。

労働環境への影響

デジタルタトゥーは原則、個人の責任ですが、公開された情報次第では出世に影響したり、左遷や解雇に発展したりすることもありえます。

SNSの個人アカウントで発信した内容や非公開で発信した内容であっても、内容次第では公開情報として拡散され、特定されたり、企業への批判の連絡が来たりすることで悪影響を及ぼすこともあります。

デジタルタトゥーが企業に与える影響

しかし、デジタルタトゥーが影響を及ぼすのは個人に対してだけとは限りません。

企業に対しても次のような悪影響を与えることがあります。

  • 誹謗中傷
  • 企業イメージの失墜
  • 取引先からの信用低下
  • 採用への悪影響

誹謗中傷

デジタルタトゥーが原因で誹謗中傷がおこなわれることはありますが、企業の場合には一度鎮静化しても改めて炎上し、誹謗中傷されることがあります。

一度企業についたイメージを払拭することはむずかしく、何が原因で注目されるかを想定することは困難です。

企業イメージの失墜

一度企業に悪いイメージがつくと、回復には相応の時間がかかります。

バイトテロはバイト店員のモラルの問題が大きいですが、そのような人材がいることそのものを問題にされたり、現在でも同様な問題があるのではないかというイメージが先行する場合があります。

取引先からの信用低下

デジタルタトゥーが原因で取引先からの信用がなくなり、売上が減ったり、銀行との関係が悪くなり融資が通りづらくなったりする可能性があります。

売上や資金は企業活動をおこなううえでもっとも基本となるリソースですので、炎上が原因で経営が立ち行かなくなる可能性があります。

採用への悪影響

求職者は事前に企業情報を調査するのが一般的です。

デジタルタトゥーが残っていることで悪い印象を持ってしまったり、選考を辞退されてしまう可能性があります。

特に採用についてはSNSや匿名掲示板だけではなく、企業口コミサイトも活発に利用されていることから影響範囲が特に大きいといえます。

デジタルタトゥーの削除方法

デジタルタトゥーは適切な手段を取ることで削除することは可能です。

しかし、弁護士ではないものが代行をおこなうことで非弁行為にあたり、法律に抵触してしまう可能性があります。

そのため、自社でできる範囲、外部に依頼する範囲を明確に区別し、専門家を中心に次のような解決策を見出す必要があります。

  • 自分で削除する
  • 警察に相談する
  • 該当する団体に相談する
  • 弁護士に相談する
  • 風評被害対策会社に相談する

自分で削除する

まずは、自分で投稿した内容であれば削除は可能です。

しかし、既に拡散されてしまっている場合には自分だけでは削除はできません。

下手に隠ぺいしようとした場合、かえって拡散されてしまうということもありますので、既に炎上している場合には専門家に相談することを優先してください。

参考:ストライサンド効果(Wikipedia)
自身での投稿ではない場合、サイト管理者に削除を依頼する必要があります。サイト管理者や掲示板管理人に連絡を取ることで個人情報は削除してもらえることがほとんどです。また、Googleの検索結果に表示される場合には個人情報を削除するときにはGoogle から個人情報を削除するを参照することで対応が可能です。

警察に相談する

デジタルタトゥーのような誹謗中傷の情報発信が見つかった場合、内容次第では警察に届け出をすることで対応してもらえることがあります。

ただし、犯罪捜査の対象になることが条件ですので、単に悪口や悪戯レベルと判断されてしまう場合には別の対処法が必要です。

該当する団体に相談する

犯罪ではない場合には警察の対応は期待できません。

その場合であっても該当する団体はあります。違法・有害情報相談センターセーフライン(一般社団法人セーファーインターネット協会)などはインターネット上の個人情報や誹謗中傷問題の書き込みなどに対応してくれることがあります。

弁護士に相談する

自身や関連団体を利用してもデジタルタトゥーを削除できない場合には弁護士に相談し、法的措置を取ることで対応できることがあります。

弁護士を介して裁判所に依頼することで次のような対策が取れます。

  • 発信者情報の開示請求
  • 情報発信者への損害賠償請求
  • 名誉毀損による刑事告訴

いずれも時間と費用がかかりますが、削除に重きを置く場合には非常に有効な手段です。

風評被害対策会社に相談する

デジタルタトゥーの削除に重きを置く場合には弁護士による対応は非常に有効ですが、デジタルタトゥー問題全般を解消したい場合には風評被害対策会社に相談することが効果的です。

風評被害対策会社は削除以外の方法を用いて問題を解決する会社で、ユーザーの目に入らないように検索結果を最適化(逆SEO)したり、ソーシャルリスニング(SNSの発信情報を収集、分析する手法)を用いて問題が起きる兆候をつかんだりします。

削除については提携している弁護士を紹介してくれたり、対策方法について情報共有してもらえたりできるため、今後の企業活動に悪影響が残りづらいのが特徴です。

デジタルタトゥーを風評被害対策業者に依頼するメリット

デジタルタトゥー問題を風評被害対策会社に依頼するメリットには次のようなものが挙げられます。

  • 誹謗中傷を防げる
  • 迅速な対応ができる
  • 問題解決ができる

誹謗中傷を防げる

誹謗中傷を削除する行為は弁護士にしかできません。

しかし、風評被害対策会社に依頼することでネガティブな情報が拡散されることを早期に対応し、防ぐことができます。

個別では工数がかかりすぎるため確認できないような事象であっても、専用の監視ツールを入れることで早期発見ができることが大きなメリットです。

迅速な対応ができる

風評被害対策会社はデジタルタトゥー問題を数多く解決してきているので社内にノウハウがあり、問題が起きたときに早期解決に向けて動くことが可能です。

弁護士に依頼して削除する場合には相応の時間がかかりますので、削除と拡散防止という2つの軸で対処することで被害を抑えることができます。

問題解決ができる

削除する場合にはどこに何があるのかを特定する必要があります。

そのため、確認に非常に多くの時間がかかりますが、風評被害対策会社はツールを使って問題を監視しますので発生経緯や根本的な原因を調査することができます。

問題の再発防止の意味もありますが、そもそもの原因を特定しない限り、拡散が止まらないこともあるため非常に効果的です。

まとめ

デジタルタトゥーとは、一度インターネットで広まった書き込みは簡単に消せないことを表す言葉です。

一度発信された情報は完全に削除することはむずかしく、長期にわたり悪影響を及ぼし続ける可能性があります。

しかし、弁護士を使って削除すると同時に風評被害対策会社をうまく活用することで問題の根本原因を特定し、被害を抑え、再発防止に努めることができます。

ブランディングを向上することはむずかしいことが多いものの、瓦解することは一瞬です。

そうならないためにも日頃からインターネット上の発信内容に関心を持つことが求められます。

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