SNS誹謗中傷事例と対処法

SNSは鮮度の高い情報発信と拡散性が高いことから企業の広報やマーケティング活動などに幅広く活用されています。一方で、SNSには誹謗中傷や炎上などのリスクがともなうため、企業はSNS運用に細心の注意を払わなければなりません。安全にSNSを活用するためには、リスク発生の原因を理解したうえで予防に取り組み、過去の事例を参考に事後対応を講じておくことが重要です。

SNSにおける誹謗中傷とは

SNSにおける誹謗中傷とは、デマや根拠のない悪質なコメントをSNS上に投稿し、相手の名誉を傷つけることです。よく似た状況として炎上が挙げられますが、炎上は特定の話題に対して議論したり批判コメントが集中したりする状態を指すため、本質は異なります。誹謗中傷を受けた際に過激な反論を繰り返してしまうと、逆に加害者になってしまうケースもあるため注意が必要です。

参考:インターネット上の誹謗中傷等への対応(警視庁)

SNSで誹謗中傷が発生しやすい理由

SNSで誹謗中傷が発生しやすい理由として次のようなものが挙げられます。

  • 匿名性であること
  • 拡散性が高いこと
  • ストレス発散が目的であること

匿名性であること

SNSで誹謗中傷が発生しやすい大きな理由として挙げられるのは匿名性であることです。Facebook以外のTwitterやInstagramなどのSNSは、基本的に匿名で投稿が可能であることから誹謗中傷に悪用されやすいといえます。

SNS上では、相手の表情が見えないことから罪悪感や抵抗感も薄れ、自分の発言に対して自己責任感も低くなるという点が特徴です。匿名であることは個人情報保護という意味では有効ですが、こうした誹謗中傷がなくならない原因でもあります。

拡散性が高いこと

SNSで誹謗中傷が発生しやすいと言われるもうひとつの大きな理由は拡散性が高いことです。SNSは情報が瞬時に広がり、同時に多くのユーザーと共有できる点がメリットです。

しかし、誹謗中傷のようなネガティブな情報も拡散されてしまう点ではデメリットともいえます。人から人へ拡散されていく間に情報内容が真実ではない情報へと変化することも多く、いつの間にか自分も誹謗中傷をしている側になっていることもあるため注意が必要です。

ストレス発散が目的であること

SNSを自分のストレスや不満を発散させる場所として利用しているユーザーも少なからず存在します。他人を攻撃することで自分の感情を満たしているユーザーもいるということです。

特に企業への誹謗中傷は罪悪感が薄れる傾向があります。企業を抽象的な存在ととらえ、自分とはつながりを持ちにくいという意識から、企業を攻撃していることに抵抗感もなくなってしまうのです。しかし、こうした身勝手な理由で他人を傷付けるような行為は、相手が個人でも企業でも許されるものではありません。

SNSにおける誹謗中傷の事例

SNSにおける誹謗中傷の事例は次のとおりです。

  • 商品やサービスに対するクレーム
  • 虚偽情報の拡散
  • サジェスト汚染
  • 従業員の誹謗中傷が企業へ発展

商品やサービスに対するクレーム

一般的に商品やサービスに対するクレームは問題を伝える手段ですが、感情的になってしまうことで攻撃的な発言になってくると誹謗中傷に該当します。また、クレーム対応に問題があると感情はエスカレートし、商品やサービスよりもスタッフに対して攻撃が及び、冷静なコミュニケーションが取れません。このような状態から個人SNSによって商品やサービスだけでなく、企業全体への誹謗中傷へと発展しやすくなります。

虚偽情報の拡散

企業のイメージを悪くすることを目的に虚偽情報が拡散されるケースもあります。実際には問題がないのにもかかわらず偽のクレームや、レビューの評価を下げるような行為は誹謗中傷です。

こうした書き込みは内部で働いた経験のある人物によるものもあり、企業へ何らかの不満をSNSで発散しているケースもあります。また、競合他社からの嫌がらせで似たような投稿をされるケースもあるため、誹謗中傷を発見した際は早急に事実確認が必要です。

サジェスト汚染

サジェスト汚染とは、検索したいキーワードを入力した際にネガティブなキーワード候補で埋め尽くされている状態のことです。購入希望の商品を検索した際に、◯◯クレームや◯◯違法などのキーワード候補が現れ、こうしたネガティブなキーワードを見たユーザーは商品に対してマイナスなイメージを持ちます。検索エンジンの仕組みを悪用したもので、サジェスト汚染も誹謗中傷のひとつです。

従業員への誹謗中傷が企業へ発展

SNS上で誹謗中傷を受けていた従業員が職場を特定され、企業への誹謗中傷に発展するケースもあります。具体例としては、コロナ感染症が流行し始めた頃、感染した人物がどこで感染したのか、どこに住んでいるのかを特定され多くの誹謗中傷を受けるという事態が発生したことが挙げられます。そのうえ、職場までも特定され、個人から企業への誹謗中傷に発展するという事態が頻繁に起こり、大きな社会問題となった事例です。

SNSで誹謗中傷を受けた時の対応法

SNSで誹謗中傷を受けたときの対応法は次のとおりです。

  • 投稿の削除請求をする
  • 法的対応を検討する
  • 逆SEO対策を依頼する

投稿の削除請求をする

誹謗中傷の拡散を防止するためには削除請求をおこなう必要があります。投稿者が特定している場合は本人に削除請求もできますが、不明な場合はサイト運営者に請求することも可能です。

サイト運営者への請求は、サイト別に多少の違いはありますが、多くは専用のフォームから必要項目を入力し、ネット上で完結できます。また、削除されるまでに時間がかかる場合が多いため、拡散される前にホームページで閲覧者に事実を確認中であることを掲載するのも有効です。

法的な対応を検討する

誹謗中傷にあたる投稿をした本人やサイト運営者が削除に応じない場合は、弁護士に相談し、法的な対応を検討する必要があります。また、誹謗中傷を発見した際は、証拠となる書き込みは書き換えられてしまう前に保存しておくことが鉄則です。

証拠がなければ裁判で不利になってしまうため、保存は必ずおこなうことが大切です。法律の専門家に依頼することで法的根拠にもとづいた対応が可能です。投稿者の特定や損害賠償請求などの手続きも適切におこなってもらえます。

専門業者に依頼する

年々増えてきている誹謗中傷に特化した専門業者に依頼する方法もあります。このような専門業者では逆SEO対策を請け負っている業者も多く、サジェスト汚染とは逆に検索キーワード候補にネガティブなワードを表示させないように対策してくれる業者です。

誹謗中傷を根本的に解決するものではありませんが、とにかく一刻も早く拡散をおさえたい場合には有効です。また、社内のリソースだけでは対応できない場合も、風評被害対策会社といった専門業者に依頼すると、適切な対応をおこなってもらえます。

誹謗中傷に適用される法律

誹謗中傷に対して適切な対応をとるためには、誹謗中傷に適応される法律をおさえておくことも重要であり、該当するものは次のとおりです。

  • 名誉毀損罪と侮辱罪
  • 業務妨害罪

名誉毀損罪と侮辱罪

人の名誉を傷つける行為は、名誉毀損罪と侮辱罪に該当し、個人だけでなく企業に対しても成立します。名誉毀損罪と侮辱罪を立証するには、投稿の保存や目撃者の証言など、誹謗中傷を受けたとされる証拠が必要です。

調査したうえで真実と証明された場合は、刑事罰が成立しないため事実確認をしっかりおこなう必要があります。また、インターネット上の誹謗中傷が大きな社会問題となっていることを重く受け止め、規制する必要があるとして侮辱罪の厳罰化も施行されました。

業務妨害罪

企業が誹謗中傷を受けたことで通常業務に支障をきたす場合は業務妨害罪にも該当します。虚偽の情報をSNSで拡散し、来客数が激減するといった被害を受けた場合は、客足を戻すために時間と人材をさまざまな対応に回さなければなりません。このように誹謗中傷が原因で通常業務に支障が出た場合は、業務妨害罪が成立する可能性が高く、刑事罰が成立すると損害賠償請求も可能です。

まとめ

SNSにおける誹謗中傷は年々増加しており、個人だけではなく企業も対象となる場合があることから、炎上に発展する前に慎重かつ迅速な対応が必要です。誹謗中傷がなぜ起きるのかを理解し、過去の事例を参考に予防策や対応策を講じておく必要があります。企業内で解決できない場合や、繰り返される誹謗中傷に対しては弁護士といった専門家に依頼することも得策であり、企業の信頼を守る有効な手段です。

参考URL

https://nexpert-law.com/sakujo/archives/321
https://itbengo-pro.com/columns/278/
https://mikata-ins.co.jp/lab/jigyo/011823
https://eltes-solution.jp/column/c12
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01679/090600078/
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